「情婦」 どんでん返し映画の名作に見事やられました…さすがは原作アガサ・クリスティ
ビリー・ワイルダー「情婦」を見ました。
これ、見る前から原作はアガサ・クリスティの戯曲「検察側の証人」だということは知っていました。あと、とんでもないどんでん返し映画ということも、昔から知っていたんですよ。名前だけはよく耳にした。
クリスティは母が好きで、ポワロやマープルものはそこそこ読んでいるんだけど「検察側の証人」は未読。
で、今回最後まで見たんですけど、いやあ、今まで見てなくて損した。白黒だからなんて敬遠してたらもったいない。
ラストで話をひっくり返すのが有名な映画には「シックス・センス」とか「ユージュアル・サスペクツ」とか「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」とか「マッチスティック・メン」とか、まあほかにもイロイロイロイロあるけど、これが一番ビックリした。あまりにも単純すぎるにも関わらず、人の心理の虚をつくドンデン返し。
これはもう原作が素晴らしいということなんだろう。さすがアガサ・クリスティだ。かなり疑って見てたのにこんなシンプルなトリックが読めないとは。
ちょっと話変わるけどさ、おなじクリスティ原作の「ナイル殺人事件」ってあるじゃないですか。
あれのトリックって、例えば4ページくらいにまとめられた「トリッククイズ本」だったら、一発で当てられるかんたんなトリックだと思うんですよ。ところが物語になると思考の盲点になってしまう。
物語と人間関係のドラマがトリックや真相を覆い隠してしまう。「スタイルズ荘」や「ABC殺人事件」なんかもそうかな。「五匹の子豚」なんかもそうか。クリスティの素晴らしいところ。さすがはミステリの女王だ。
映画の話に戻るけど、主役の太っちょ弁護士卿をはじめ、キャラも立っているし、コミカルで見やすく、テンポよく進むのもいい。とにかく何もかもが素晴らしい。「検察側の証人」もいいけど、本タイトルの「情婦」のほうがなんとなく物語にも合っていると思う。
名作。★9.5で。